小規模事業者のためのサイバーセキュリティ入門|無料相談と公的支援で安心対策

はじめに

「うちは小さい会社だから狙われることはない」「パソコンやスマホのことはよくわからないので対策は難しい」——こんな声をよく耳にします。
しかし実際には、中小企業や小規模事業者もサイバー攻撃の被害に遭うケースが増えており、被害額の平均は70万円以上、復旧には1週間近くかかるという調査結果も出ています。大企業に比べて余力の少ない小さな会社にとって、このようなトラブルは経営そのものを揺るがしかねません。


小規模事業者を狙う“身近なリスク”

サイバー攻撃と聞くと、大企業や有名企業を狙うものというイメージがあるかもしれません。ですが、最近の攻撃は自動化されており、規模や知名度に関わらず無作為に対象が選ばれることが多いのです。

たとえば、実在の取引先を装ったメールに請求書や見積書を装ったファイルを添付して送りつける「フィッシング詐欺」。あるいは、パスワードの使い回しを狙った不正ログイン。社内のデータを暗号化して業務を止めるランサムウェア。さらに、取引先から「セキュリティ対策をしてほしい」と要請を受けるサプライチェーン型のリスクも増えています。

こうしたリスクは、日常業務と隣り合わせに存在しています。


「自分には関係ない」と思いがちな理由

「うちは有名じゃないから大丈夫」「セキュリティは難しくて自分たちにはできない」「コストがかかるから手が出せない」——こうした理由で、セキュリティ対策を後回しにしてしまう方は少なくありません。

しかし実際には、攻撃は規模を選ばず、自動的に探知されます。基本的なルールを守れば特別な知識がなくても対策できますし、公的な補助金や支援制度を使えば、思った以上に少ない負担で始められるのです。


今日からできる“基本の5つ”

IPA(情報処理推進機構)では、中小企業向けに「情報セキュリティ5か条」を掲げています。これは難しい技術を使うものではなく、今日から取り組めるシンプルな習慣です。

まずは、パソコンやスマートフォンのOSやソフトを常に最新に保つこと。次に、ウイルス対策ソフトを有効化すること。パスワードは使い回さず、できれば二段階認証を設定すること。共有フォルダやクラウドの権限を見直し、必要な人だけにアクセスを制限すること。そして最後に、「怪しいメールやリンクは必ず確認する」という習慣を持つことです。

これらを実践するだけでも、多くの被害を防げますし、SECURITY ACTIONという自己宣言制度を利用すれば、取引先に「セキュリティに取り組んでいる会社だ」とアピールすることもできます。


公的支援をうまく使う~中小企業向けサイバーセキュリティ支援策まとめ

「やっぱり不安だから、専門家に見てもらいたい」という方に向けて、いくつもの公的支援制度が用意されています。

IPA「サイバーセキュリティお助け隊」サービス制度

サイバーセキュリティお助け隊は、中小企業が低コストで基本的なセキュリティ対策パッケージを受けられるよう国が認定した民間サービスですmeti.go.jp。具体的には、24時間の異常監視緊急時の駆け付け対応相談窓口の設置、そして簡易的なサイバー保険まで、サイバー攻撃対策に不可欠なサービスをワンパッケージで提供しますmeti.go.jp。専門知識がなくても利用でき、すでに数千社の中小企業が導入していますmeti.go.jp

このお助け隊サービスは経済産業省とIPAが普及を後押ししており、IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠)の対象にも認定されていますmeti.go.jp。例えば、お助け隊サービス導入にかかる初期費用や最大2年分の利用料について、中小企業は1/2補助、小規模事業者なら2/3補助が受けられ、最大150万円まで支給されますmeti.go.jp。これにより、実質的な負担を大きく減らしてセキュリティ強化に取り組むことができます。IPAでは対象サービスに「お助け隊マーク」を付与して紹介しており、比較サイトで料金や内容を一覧できますmeti.go.jp。必要な対策を安価にまとめて導入できるため、「何から手を付ければ良いか分からない」「コストをかけられない」という中小企業にとって心強い支援策ですmeti.go.jp

IPA「情報セキュリティ安心相談窓口」

情報セキュリティ安心相談窓口は、IPAが開設している無料の相談窓口です。ウイルス感染や不正アクセスなど一般的な情報セキュリティに関する技術的な質問・相談に対し、専門家のアドバイスを提供していますipa.go.jp。電話(平日10~17時)やメールで気軽に相談でき、相談料は無料ですipa.go.jpipa.go.jp。実際にこの窓口には年間1万件を超える相談が寄せられており(2024年は12,787件)ipa.go.jp、中小企業や個人事業者にとってセキュリティの「駆け込み寺」となっています。自社で不審なメールを受け取った場合の対処法や、ウイルス感染が疑われる際の対応など、「困ったときにすぐ相談できる」頼れる存在ですipa.go.jp。公式サイトでは過去の相談事例や注意喚起情報(安心相談窓口だより)も公開されており、最新の脅威への対策知識も得られます。

中小機構「IT経営サポートセンター」

IT経営サポートセンターは、中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する無料のオンライン相談サービスです。IT活用全般の相談窓口ですが、情報セキュリティ対策の悩みも専門家に相談できますkyoujinnka.smrj.go.jp。特徴は、実務経験豊富なITの専門家Zoomを使ったオンライン相談で対応してくれる点です。1回60分程度の個別相談を何度でも無料で利用可能で、予約すれば繰り返し支援を受けられますkyoujinnka.smrj.go.jp。たとえば「自社にどんなセキュリティ対策が必要なのか分からない」といった漠然とした悩みでも、ヒアリングを通じて課題を整理し、必要な対策を一緒に考えてくれますkyoujinnka.smrj.go.jp。実際の支援例では、専門家と数回にわたり現状診断(IPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」の活用)や社内ルール作りを進め、従業員へのセキュリティ教育方法までアドバイスを受けられたケースもありますkyoujinnka.smrj.go.jp。中小企業診断士やITコーディネータなど企業支援のプロも同席可能で、支援者自身が相談することもできますkyoujinnka.smrj.go.jp。自社内にIT担当者がいない、どこから手を付けるべきか迷っているといった小規模事業者にとって、継続的なサポートが得られる心強い制度です。

IPA「SECURITY ACTION」自己宣言制度

SECURITY ACTION(セキュリティアクション)は、IPAが中小企業向けに提供する自主的なセキュリティ実践宣言制度ですmeti.go.jp。費用は一切かからず、「まず取り組むべき基本的な情報セキュリティ対策」をチェックリスト形式で実践するものですmeti.go.jp。☆一つ星では「OSやソフトを常に最新にする」「パスワードを強化する」等の5項目meti.go.jp★★二つ星では社内規程整備や訓練計画の策定など25項目(一つ星の5項目を含む)meti.go.jpの対策を実施し、IPAサイト上で自己宣言します。宣言企業は公式ロゴマークを利用でき、自社のセキュリティに取り組む姿勢を対外的に示すこともできます。また、このSECURITY ACTIONへの参加自体が各種補助金申請の要件とされるケースもありmeti.go.jp、宣言しておくことで今後のIT補助金・助成金の活用もしやすくなります。取り組み方が分からない場合は、チェックリストや解説ガイド「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」meti.go.jpが提供されているので、経営者自らが社内のセキュリティ状況を見直す良いきっかけになります。

その他の支援策・相談先

上記のほかにも、中小企業・小規模事業者のサイバーセキュリティ強化を支援する取り組みが各所にあります。例えば東京都では、産業労働局が中心となり「東京中小企業サイバーセキュリティ支援ネットワーク(Tcyss)」を設立し、中小企業向けの無料相談窓口を設けていますsecurity-portal.nisc.go.jp。平日昼間に電話やメールで相談を受け付けており、情報セキュリティ対策の強化方法や、ウイルス感染・情報漏えいに関する相談に専門機関が対応していますsecurity-portal.nisc.go.jpsecurity-portal.nisc.go.jp。また、自治体や商工会議所によっては、サイバーセキュリティ専門家の派遣や簡易診断サービスを提供しているところもあります。例えば地域のITコーディネータや中小企業診断士が事業所を訪問し、基本的なセキュリティ対策状況をチェックして助言をくれる制度や、セキュリティポリシー策定を支援する補助金(※自治体例:神奈川県の小規模事業者向け補助金security-portal.nisc.go.jp)なども存在します。

加えて、万一サイバー被害に遭ってしまった場合には、IPAのサイバーレスキュー隊(J-CRAT)が標的型攻撃の専門相談に対応したりipa.go.jp、警察庁や各都道府県警がサイバー犯罪被害相談窓口を設置していますnpa.go.jp。こうした公的機関の力も借りながら、中小企業は安心してデジタル化・IT活用を進めることができます。専門用語に詳しくなくても大丈夫です。不安なことがあればまずは無料相談を活用し、必要に応じて専門家に繋いでもらうことで、自社に最適なセキュリティ対策や支援策を見つけることができるでしょう。kyoujinnka.smrj.go.jp各種制度をうまく活用し、費用面・技術面のハードルを下げながら、ぜひ早めのサイバーセキュリティ対策に取り組んでみてください。


まとめ:最初の一歩を

セキュリティ対策は会社の信用と事業継続に直結します。小さな会社だからこそ、ひとたび業務が止まれば影響は大きくなります。

でも、最初の一歩は意外に簡単です。「情報セキュリティ5か条」を実践し、必要なら無料相談窓口を使って専門家の意見を聞くことも可能です。

参考リンク

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